カイパパ通信blog

カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクルの方から来ました

1990年代まで強制的な不妊手術が行われていた事実を前にして何を思いますか?

手をつなぐ育成会の声明文を紹介したいのですが、まずその背景を説明します。

旧優生保護法によって強制的な不妊手術が行われていた

日本には優生保護法という法律がありました(1996年に改正され、母体保護法となった)。
優生保護法(法文:衆議院HP)では、第4条に次のように定められていました。

(強制優生手術の審査の申請)
第四条 医師は、診断の結果、別表に掲げる疾患*1に罹つていることを確認した場合において、その者に対し、その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは、前条の同意を得なくとも、都道府県優生保護委員会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請することができる。

 つまり、本人や家族らの同意がなくても都道府県の審査会が認めれば手術ができることとされていて、実際に手術が行われていたのです。その数は約2万5千人に上り、うち約1万6500人は同意のないまま強制されたとされています*2 *3 

全国手をつなぐ育成会連合会が出した声明文を読んで

zen-iku.jp

この問題は私たち知的障害のある人の家族にとっても大きな課題を突きつけていると考えます。不妊手術の強制は、以前から問題視されていました。でありながら、私たち自身もこの問題に向き合ってきたとは言えません。

地域で暮らしていくための福祉サービスも未整備で、偏見や差別も根強い時代の中で、周囲や専門家から手術を勧められ、首を縦に振った家族も少なくなかったはずです。

そうした実態はある意味タブー視され、私たちの間でも共有されることはありませんでした。

この部分にわたしは注目しました。
手をつなぐ育成会は、知的障害の子を持つ親を中心とした団体です。
「非は国にある」と突き放して言い切ることができるのならよかった。でも……この法律の規定は1996年まで生きていました。直接、手術を「許容した」家族もいるわけです。そして、それが誰なのか、当事者以外に知ることはできません。だから、議論することもできなかった。この逡巡を想像する時、「親」が常にもっている障害のある子に対する加害性を意識しないではいられません……。
しかし、痛くても事実を究明して、過ちをくりかえさないことが求められます。

手をつなぐ育成会の声明文を再び引用します。

障害のある人の尊厳を大きく傷つけてきた不妊手術に対し、国はその過ちを認め、全容の解明とすべての対象者への謝罪・補償を行うべきと考えます。
一つの命としてこの世に生まれ、さまざまな困難に直面しながらも誰かを愛し、家族をつくり、時間を共有しながら人生を全うしていくことは、誰にも認められるべき生き方です。
そこに、障害の有無など関係ありません。

ぜひ全文(PDF)に目を通していただき、考えていただけたらと思います。 

*1:別表の疾患

別表   (第四条、第十二条関係)
第一号 遺伝性精神病     精神分裂病
      そううつ病
      てんかん
第二号 遺伝性精神薄弱
第三号 顕著な遺伝性精神病質     顕著な性慾異常
      顕著な犯罪傾向
第四号 顕著な遺伝性身体疾患     ハンチントン氏舞踏病
      遺伝性脊髄性運動失調症
      遺伝性小脳性運動失調症
      神経性進行性筋い縮症
      進行性筋性筋栄養障がい症
      筋緊張病
      先天性筋緊張消失症
      先天性軟骨発育障がい
      臼児
      魚りんせん
      多発性軟性神経繊維しゆ
      結節性硬化症
      先天性表皮水ほう症
      先天性ポルフイリン尿症
      先天性手掌足しよ角化症
      遺伝性視神経い縮
      網膜色素変性
      全色盲
      先天性眼球震とう
      青色きよう膜
      遺伝性の難聴又はろう
      血友病
第五号 強度な遺伝性奇形     裂手、裂足
      先天性骨欠損症

*2:参照:神戸新聞NEXT社説2018年1月31日

*3:参照:岩波書店「科学」1997 VOL.67 NO.10