セレブが「わが子は自閉症だ」とカミングアウトしてくれたらいいのに、と思っていた。
昔、発達障害者支援法がまだなかった頃だから、10年以上前の話です。
わたしは「どうしたら自閉症をもっと一般の人に知って理解してもらえるか?」を考えていました。今よりずっと切実に。
ブログを始めたのも、もっと理解者を増やしたいと思ったことが一番の理由でした。
カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクルのコンセプトは、当初から、
「自閉症から広がる、チャレンジに満ちた新しい世界」を紹介して、勇気と知恵を与え合う。
→家族が少しでも楽になって
→サポーターが1人でも増えて
→「自閉症でOK!」の地域になり
→本人の笑顔が増えるといいな!
というものでした。
ある日「自閉症の子どもは世界中で、どの人種にも、どの社会階層にも生まれる」と本で読みました。
そうだよな。だれもが、自閉症に生まれる可能性があって、だれもが、自閉症の子どもを持つ親になる可能性がある。だったら、きっと有名人の中にも、自閉症の子どもを持つ親がいるはずだ。そのセレブが、
「わたしの子どもは自閉症なんです」
とカミングアウト*1してくれたら、一気に自閉症への理解が広がるのに! と思ったんです。
あなたは、そう思ったことはありませんか?
わたしは、その思いつきを友人に話しました。
「日本では無理かもしれないけど、障害理解が進んでいる海外ならカミングアウトも普通かもしれないよね」
「それはどうかな? 障害があるとわかったら、誘拐とかレイプとか子どもが傷つけられるリスクが上がってしまうよ」
友人は、海外の有名人は子どもの誘拐を警戒してボディーガードを雇っていると聞いたことがあると言いました。それは障害がなくてもそうだと。
言われてみれば、たしかにそうですよね……
だまされてしまって危険に気づくのが遅れる、助けを呼ぶことができないなど、障害があるがゆえに身を守る力が弱いということがあります。
ただでさえ様々な危険にさらされている有名人が、あえてわが子の危険を招く言動を避けるのは当然のことです。
そう理解した後でも、わたしは、しばらくセレブにカミングアウトしてほしいという思いを捨て去ることはできないでいました。
今となっては、その態度を恥じています。
それは、
自分はリスクを負うことなく、他人にリスクをおかすことを求める姿勢だから。
そして、この姿勢は、自己の目的のために、他人を「道具」として使おうとしている。
と気がついたからです。
別に、セレブのお子さんと家族が幸せになってほしいからでもなく、ただ、自閉症の理解を広げるためにカミングアウトしてほしいと願っただけ……
これは恥ずべきことです。
昔にくらべて、子どもの障害をオープンにする有名人がずいぶんと増えました。
おなじ親として、ありがたいことだと思いつつ、胸がちくりと痛むのです。
*1:カミングアウトは「自らのことを他人に明らかにする」という意味なので、別人格である子どもの障害を告白することを「カミングアウト」と称すること自体が問題性を含んでいる。このことについては別記事で書きたい。